いわゆる光とは、電磁波のうち、人間の目で見える波長のものをさす。可視光線のことだ。
可視光線

可視光線の波長の範囲は下限がおおよそ380 nm(ナノメートル)~上限が830 nmぐらいとされている。それより波長が短いと目に見えない紫外線、長いとこれまた目に見えない赤外線となる。赤外線のなかでも波長が短いものは近赤外線、長いと遠赤外線と呼ばれている。

蚊を寄せ付けない光のバリアー

光のバリアー
このほど、コロンビア大学のSzabolcs Marka 准教授が蚊を寄せ付けない光のバリアー「Light Wall(光の壁)」を作ることに成功したと報告した。まだ実用化段階ではないので、この光の波長はナイショなのだが、蚊の獲物を見つけるための感覚センサーを混乱させる波長の光なのだという。



マラリア撲滅に光明
蚊の媒介が原因の感染症「マラリア」は、毎年100万人近い人命を奪う。犠牲者の大半は、アフリカ大陸の南部に暮らす5歳以下の子どもたちだ。ビル・ゲイツ財団はSzabolcs Marka氏の蚊を寄せ付けない光のバリアー「Light Wall(光の壁)」の研究・開発に対し100万ドルの助成金を授与している。そして現在、実用化に向けて開発が進んでいる。

がんに対する光治療
体の外から光を当ててマウス体内のがん細胞を破壊する実験に、米国立衛生研究所の研究チームが成功し、6日発行の科学誌 Nature Medicine(電子版)に発表した。正常な細胞は傷つけず、効率的にがん細胞だけを破壊できる治療法として、数年以内の臨床応用を目指すとしている。

チームは、主にがん細胞に存在するたんぱく質と結びつく性質を持った「抗体」に注目。この抗体に、近赤外線の特定の波長で発熱する化学物質を取り付け、悪性度の高いがんを移植したマウスに注射した。
light-therapy-cancer

その後、がんがある部位に体外から近赤外線を15~30分間当てた。計8回の照射で、がん細胞の細胞膜が破壊され、10匹中8匹でがんが消失、再発もなかった。一方、抗体注射と照射のどちらかだけを施したマウスや何もしなかったマウスは、すべてが3週間以内にがんで死んだ。複数の種類のがんで同様の効果を確認。注射された抗体ががん細胞と結びつき、照射によって化学物質が発する熱で衝撃波が発生、がん細胞だけを壊したと結論づけた。

がんに対する光治療には、今回と波長の異なる光を当てる方法があるが、やけどをしたり、光を受け止める物質ががん細胞以外にも結びついたりするなど、健康な細胞への影響が避けられなかった。

近赤外線を使う新しい方法では、抗体がわずかに正常細胞に結びついても、光の強さを調節することでがん細胞だけ破壊できる。また、光自体が無害なため繰り返し照射でき、体表から5~10センチ程度の深さまで届くという。

チームの小林久隆主任研究員は「抗体は、肺、乳、前立腺、大腸、卵巣、白血病、悪性リンパ腫などさまざまながんに使えるものが承認されており、数年以内に臨床応用を実現させたい。がん細胞が血中を移動する転移がんでも、それに結びつく抗体が見つかれば応用できる」と話す。(Yahoo!ニュース