近年、日本人女性の乳がんは増えている。乳がんの発症リスク増大に、強く影響する因子として家族歴は、よく知られていて全体の10~15%を占めている。

日本人女性の乳がんは増えている

乳がんの中で原因遺伝子が判明しているものは、遺伝性乳がんと呼ばれ、複数の遺伝子が判明している。
BRCA1

BRCA1およびBRCA2は、代表的な乳がん遺伝子で染色体部位はそれぞれ、17q21と13q12-13に存在する。

遺伝形式は常染色体優性遺伝。

つまり、このBRCA1および2遺伝子の変異は、親から子へ、性別に関係なく50%(1/2)の確率で受け継がれることになるのだ。

この2つの遺伝子は、「ゲノムの管理人」としてゲノムの安定性の維持に機能していて、遺伝子修復の鍵を握るとされている。そして、この遺伝子変異を持つ家系の特徴として、家系内に乳がんまたは卵巣癌の患者が複数いる男性乳がん患者がいる若年発症者がいる乳がんと卵巣癌を同時に発症した患者がいる、などが挙げられる。

また、BRCA1および2遺伝子の変異がある人では、50歳までに33~50%、70歳までに56~87%という高い確率で乳がんを発症するといわれている。

さて、このBRCA1/2の遺伝子診断であるが、日本では、ファルコバイオシステムズという会社が手がけている。

本日の記事は、怖いことばかり。ただ、わが国において『家族性乳がん・遺伝性乳がん卵巣癌』に対する予防切除を含む予防法、検査法、治療法、そしてカウンセリング、どれをとっても未だ確立されていないというのは、事実。この遺伝子検査自体も保険適応はなく10万円以上の費用がかかる。

前述の通り、BRCA1/2陽性者の乳がん発症率は非常に高く、欧米においてはリスク軽減乳房切除術として予防切除が認められている。そして、その予防切除には、約90%のがん抑制効果があると結果が出ているのだ。日本において、全く病変の無い乳房を予防的に切除することはできない。予防切除が欧米のように日本でコンセンサスを得るには、今の段階では、まず幅広いデータが必要となる。(厚労省がこの治療法を認めるためには科学的データに裏付けされた根拠が必要。)

だから今、われわれにできることは、周囲に上述のような家系内発症をしている人がいるなら、その人に乳腺外科の受診を薦めること。